世界が驚いた「代替肉」!アメリカ大手2社の比較で見えてきた今後の市場動向

社会×環境×農業

皆さんは「代替肉」をご存知ですか?代替肉とは、豆類など植物性の原料を使用して作られた、肉に代わる食品のこと。近年では、食感・味ともに本物の肉にも劣らないほどの高品質の代替肉が登場しており、世界的に注目を集めています。
代替肉が市場拡大を広げている背景にあるものとは?代替肉にはどんな原料を使用しているの?…世界大手の代替肉メーカー2社を紹介しながら、「代替肉」の真意に迫ります。

代替肉流行の背景にあるものとは?

そもそもどうして、代替肉が市場を拡大しているのでしょうか。その背景には、さまざまな要因が考えられますが、大きな比重を占めている理由に「食糧危機」の問題があります。
世界の人口は2019年の77億人から2030年には85億人、2050年には97億人、2100人には109億人へと増加の一途をたどることが、国連の試算で明らかになっています。日本は人口減少傾向にありますが、世界的にはどんどん人口が増えていっているのです。そこで懸念されるのが、食料危機。地球内の限られた資源の中で、食べ物をどうやって共有するのかが問題となっています。
特に、体を作るために大切なタンパク源となる肉や魚は、人間の手で作り出すのが大変な上に、成長に時間がかかります。植物由来のタンパク源となる代替肉であれば、動物を殺傷せずに済み、さらに生産性が高いこともあり、持続可能な食料として脚光を集めてきました。

さらに、代替肉にとって追い風となっているのが、環境問題と健康志向に対する世論です。まず環境問題に関していえば、1頭の牛を育てるまでの過程には、多くの環境資源が必要だという点が問題視されるようになってきました。後述で詳しくご紹介しますが、世界最大手の代替肉メーカーのビヨンドミート社の算出によると、牛肉の代わりに代替肉を食べた場合の環境負担は、「温暖効果ガスの排出量は90%オフ、使用される水は99%オフ、森林伐採面積は93%オフ」になるのだといいます。
そして健康の観点では、肉の過剰摂取による肥満が危惧されています。植物由来の代替肉を食べることは、カロリーや脂肪分が抑えられる上に食物繊維を摂取できるため、健康志向の人からも指示を得てきたのです。

代替肉の認識を変えた「ビヨンドミート」

「ビヨンドミート社」とは

経済的な側面から代替肉のネームバリューを高めた立役者といえば、アメリカカリフォルニア州に本社を置く「ビヨンドミート」です。2019年にナスダック市場へ新規上場し、初日株価が3倍近に高騰したことでも話題となりました。
ビヨンドミート社は、2009年にイーサン・ブラウン氏によって設立。ブラウン氏は、創業以前は再生可能エネルギー事業に携わっており、環境問題を発端に同社を立ち上げました。同社の志向は、マイクロソフト社創業のビル・ゲイツ氏やツイッター創業者のビズ・ストーン、俳優のレオナルドディカプリオなど、環境問題への取り組みを支持する投資家による出資へとつながっています。

生肉コーナーに並んだ代替肉

ビヨンドミート社の商品で最も有名なのが、ハンバーガー用のパティーのビヨンドバーガー。こちらは、生肉のようなピンク色の状態で販売されており、焼くと褐色へと変化していきます。まさに牛肉を焼いているかのような感覚で調理することが可能です。それまで、アメリカの大手スーパーでは、代替肉はベジタリアンやヴィーガン向けに店内の一角で販売されていましたが、ビヨンドバーガーは肉じゃない商品としては初めて生肉コーナーに陳列されるように。実際にビヨンドバーガーを購入している客層は、普段お肉を食べる人が全体の9割を占めており、ベジタリアンやヴィーガンの枠を超えて、代替肉の需要が高まっていると言えます。

植物由来のビヨンドバーガー

ビヨンドバーガーの原材料は「水、えんどう豆分離タンパク、キャノーラ油(圧搾)、精製ココナッツオイル、玄米タンパク、天然香料、ココアバター、緑豆タンパク、メチルセルロース、ジャガイモ澱粉、りんご抽出物、ざくろ抽出物、塩、塩化カリウム、酢、濃縮レモン汁、ヒマワリレシチン、ビーツ抽出液(着色)、人参」です。最も含有量が多いのは、えんどう豆分離タンパク質。加えて、玄米タンパク質と緑豆タンパク質も多く含まれており、この3種類の植物性タンパク質を主軸に、ジャガイモや植物油を配合しています。加熱前の生肉のような鮮やかな赤色は、ビーツの色素が由来になっています。

商品の多様化と世界進出

ビヨンドミート社では、ビヨンドバーガー以外にもさまざまな商品を発売していて、ソーセージやチキンを思わせる商品にも定評があります。また、そぼろにしたり、ミートボールにしたりできる挽き肉状の商品「ビヨンドビーフ」も主力商品となっています。これらの商品は主要スーパーで取り扱いがあるほか、レストランへの導入も顕著です。スターバックスやダンキンドーナッツ、ケンタッキーフライドチキン、ピザハットなど、世界的に名をはせる飲食店へと展開しています。

独自成分で品質向上「インポッシブルフーズ」

肉の再現度は代替肉業界随一

代替肉市場で、ビヨンドミート社と並ぶ勢いで注目を集めているのが、「インポッシブルフーズ」です。同社は、パトリック・ブラウン氏を中心にして2011年に創業されました。ブラウン氏は、スタンフォード大学で生物名誉教授として長年勤め、生物学者や研究者として数々の賞を受賞した輝かしい経歴の持ち主。60歳を目前に、気候変動から地球を守るべく使命感を持って起業しました。
インポッシブルフーズ社の商品は、「肉のような再現度の高さ」が特徴です。食べる際はリアルな肉汁感があり、「肉の再現力はビヨンドミート社以上」との呼び声も高くなっています。

独自成分「ヘム」が決め手

インポッシブル社の商品の肉汁感の秘訣は、原材料にあります。同社では、「ヘム」と呼ばれる大豆根粒内の鉄分を含むタンパク質を原料に、代替肉にとっての血液に相当する化合物の独自開発に成功。加熱により赤色から茶色へと色が変化する様も、微量の鉄分を含む肉らしい味わいも、このヘムによる化合物が引き起こしています。このほか、牛肉のジューシー感を出すためにココナッツオイルとヒマワリオイルをブレンド。大豆由来のタンパク質を主原料に、これらの食材を組み合わせて代替肉を作り上げています。

飲食業界を通して世界へ

ビヨンドミート社が大手スーパーを機に市場を拡大していったのに対して、インポッシブルフーズ社は早くから飲食店に着目しました。サンフランシスコ、ニューヨークのレストラン6店舗で商品化すると、若年層を中心にSNSで話題に。2019年にはバーガーキングと提携し、現在ではアジア方面への海外進出も果たしています。また、インポッシブルフーズ社では、植物由来の食材を原料とした魚商品の開発に取り組んでいることも明らかにしており、今後の動向からも目が離せません。

日本における代替肉市場の今後

2021年3月現在、ビヨンドミート社、インポッシブルフーズ社のどちらの商品も日本では販売されていません。両者同様にアジア圏での市場拡大が進んでいるだけに、日本進出は目前との予想もありますが、詳細は明らかになっていないのが実情です。その一方で、マルコメや日本ハム、伊藤ハム、大塚食品など国内の大手企業でも代替肉の商品化が進んでいます。日本における代替肉市場の競合が益々激化していくのは間違い無いでしょう。ぜひ皆さんも注目してみてくださいね。

Minami Ota

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フリーライターの太田です。 私も大人になってから「農業の魅力」に気がついた一人です。 農がキーワードの身になる話題を随時お届けしていきます!

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