SDGsの救世主!? ヴィーガンから考える食と私たちの未来

社会×環境×農業

突然ですが、「ヴィーガン」という言葉を耳にしたことはありますか?

コトバンクでは、「ベジタリアン(菜食主義者)のうち、畜肉・鶏肉・魚介類などの肉類に加え、卵や乳・チーズ・ラードなど動物由来の食品を一切とらない人。ピュアベジタリアン」と掲載しています。「ダイエットになるかも」と思った方もいれば「栄養偏りそう」と感じた方もいると思います。

実は今、そんな「ヴィーガン」が、SDGsに貢献しているのではないか、と話題になっているのをご存じでしょうか。ピンとこない方も多いでしょう。

そこで今回は、ヴィーガンとSDGsにどんなつながりがあるのか、本当にSDGsに貢献しているのかを考えながら見ていきましょう。

ヴィーガンとは

ヴィーガンとは、ヴィーガニズムをしている人を指す言葉です。

「ヴィーガニズム」は、The Vegan Society「Definition of veganism」によると、「食物、衣服、またはその他の目的のために動物を搾取したり、動物を虐げたりすることを、可能な限り排除しようとする哲学・生活様式です。動物、人間および環境の利益のために、動物を含まない代替品を積極的に使用すること。食事では、完全にまたは部分的に動物に由来するすべての製品を排除することを意味します」とあります。

ヴィーガンになる理由は、人によってさまざまです。動物愛護がきっかけの人、畜産・酪農業がもたらす環境問題を知った人、自分自身の健康状態を改善しようとした人、エシカル消費を実行している人などが挙げられます。

SDGsとは

SDGsは、2015年9月に国連サミットで採択された、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)です。「誰も置き去りにしない」社会を目指し、17の目標を定めています。全世界の人々が協力して取り組み、2030年までに達成することを掲げています。

2021年に入り、テレビやネット記事でもよく見かけるようになった言葉です。SDGsを意識して「エコバッグを使うようにしている」「ペットボトルは買わずにマイボトルを持ち歩いている」という取り組みをしている方も多いのではないでしょうか。

参照:外務省「SDGsとは」

ヴィーガンがSDGsに影響すること

SDGsが掲げる17の目標を一つひとつ見ていくと、ヴィーガンが達成に貢献できるのでは?と思う目標がいくつかあります。分野別に見ていきましょう。

貧困

1つ目は「目標1:貧困をなくそう」への貢献です。ヴィーガンが増えれば、畜産に使用する土地を減らすことができます。

2015年時点で、世界で7億人を超える人々が貧困状態(国際的な貧困ライン:1日1.9ドル以下で暮らす人々)にあり、持続可能な生活を確保する収入や資産がなく、飢餓や栄養不良、教育などのサービスへのアクセスが不足している状態です。

そんな現状の中、世界中の肉食者のために土地を奪われ、住む場所を失う人がいます。世界第2位の牛肉生産量を誇るブラジルでは、1988年から2014年までに、アマゾンで森林伐採された地域の63%が牛の放牧地になったデータがあるほど。

肉を選択的に食べないヴィーガンが増えることで、土地を失う人や貧困ラインを下回る人が減ることでしょう。

参照
アムネスティ・インターナショナル報告書「森林から牧草地へ 世界的な牛肉サプライチェーンに潜むアマゾンでの違法な牧畜」
世界の牛肉生産量 国別ランキング・推移

飢餓

2つ目は「目標2:飢餓をゼロに」への貢献です。ヴィーガンが増えれば、畜産や酪農に使う飼料を飢餓に苦しむ人々の食料に回せるかもしれません。

現状、飢餓に苦しむ人は世界で約8億人もいるのです。また、肉食を支える牛や豚・鶏などに与える飼料は主に穀物ですが、世界中で生産されている穀物の約3割が家畜の飼育用に生産されているといいます。

肉食がだめなわけではありません。問題は、有り余るほどの量が食料の豊かな先進国を中心に流通していることです。日本の「食品ロス」は年間約600万トン。これは、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料援助量の1.4倍の量です。もちろんこの中には、たくさんの動物性食品が含まれています。

ヴィーガンを選択し、世界中の穀物の一部でも飢餓に苦しむ人に行き渡ったらどうでしょうか。

参照
消費者庁「食品ロスについて知る・学ぶ」
vegeness「ヴィーガンが貧困や飢餓を止める?ヴィーガンとSDGsの深い関係」

健康と福祉

3つ目は「目標3:すべての人に健康と福祉を」への貢献です。ヴィーガンは、人々の身体の健康にとっても良い影響があります。

欧米諸国では、糖尿病や肥満人口が増加していますが、その原因の一つとして動物性食品の大量摂取が挙げられます。生活が豊かになれば、動物性食品を購入することができるようになり、健康に欠かせない栄養を摂取することができます。しかし、摂りすぎることはよくありません。

ヴィーガンを選択すると、野菜や果物、ナッツ類や植物油の摂取が中心になります。これらの食事は、血圧の低下や血中脂質の改善に役立ち、心疾患やガンのリスクを下げることにつながります。

しかし、ヴィーガンであなたの身体を健康に保つ栄養や満足感は得られるでしょうか?

参照
ハッピーキヌア「今さら聞けない「SDGs」とは|ヴィーガン必見のエシカルなトレンドを解説」

安全な水へのアクセス

4つ目は「目標6:安全な水とトイレを世界中に」への貢献です。ヴィーガンが増えれば、安全な飲み水にアクセスできない多くの人々に水を供給できる可能性があります。

現在、世界で安全な飲み水にアクセスできない人々は約21億人もいるのです。また、経済状況の悪化やインフラの不備などによって毎年数百万人が、水不足や不衛生な水による病気に苦しんでいます。
一方で、畜産には大量の水が必要です。牛の体を洗ったり、掃除や排泄物を洗い流すために使われ、牛肉1kgを生産するのに約13,000リットルの水が使用されます。病気予防に使われる抗生物質などがそのまま海や川に排出され、水質の悪化につながっている事実もあります。また、開発途上国では動物の糞尿が人間が使う水にも入り込んでいることもあります。
畜産のために使われていた大量の安全な水資源を、不衛生な水で暮らす人々に回すことができたら、世界はどう変わるでしょうか?

参照
LOVST-TOKYO INC.「ヴィーガンの世界からSDGsを考える」

労働環境

5つ目は「目標8:働きがいも経済成長も」への貢献です。ヴィーガンが増えれば、人々が劣悪な労働条件で働く状況を助長させないことにつながります。

現在、世界人口の約半数が1日約2ドルの所得で生活し、世界の子どもの10人に1人が児童労働を強いられています。

ヴィーガンの中には、非人道的な条件のもとでつくられた商品や食品の購入を拒否する人々がいます。人や環境にとって適切な労働環境や流通・販売経路をたどった食品や衣服、日用品などを選択しています。

参照
ハッピーキヌア「今さら聞けない「SDGs」とは|ヴィーガン必見のエシカルなトレンドを解説」

気候変動

7つ目は「目標13:気候変動に具体的な対策を」への貢献です。ヴィーガンが増えれば、地球温暖化の抑制につながります。

みなさんもご存じのように、地球温暖化の主な原因に温室効果ガスの排出があります。動物性食品を食べるためには、漁業や畜産業が欠かせません。漁業においては、船の燃料から二酸化炭素が発生します。畜産においては牛の排泄物やゲップからメタンガスが発生しており、人為的に生じるメタンガスの37%も占めているのです。また、畜産をするために森林伐採をすることで、地球全体の二酸化炭素の吸収量を減らしてしまっています。
また、ヴィーガンの中にはパームオイルを避ける人もいます。パームオイル自体は植物性油ですが、東南アジア地域の豊かな森林を切り開いて生産している現状を考えての選択です。

ヴィーガンを選択する人が増えれば、余計な森林伐採が減り、温室効果ガスの排出も削減することにつながるのです。

参照
平成 26 年度 消費者問題調査研究報告書「肉食(畜産)が影響を及ぼす 「地球環境・食糧危機」と「動物虐待」と「生活習慣病」」

海の生態系

8つ目は「目標14:海の豊かさを守ろう」への貢献です。ヴィーガンが増えれば、海の生態系の保護につながります。

先述の畜産による水質汚染や、後先考えない乱獲などによって、海の生態系が危機的な状況にあります。2013年時点で、世界の水産資源のうち約3割が「過剰利用または枯渇状態の資源」となっています。

ヴィーガンは魚介類を摂取しないため、多くの海洋生物の過剰な捕獲を抑制することができます。また、海洋生物の成分が含まれている日用品も極力避ける傾向にあり、海の生態系の保護につながりそうです。

参照
水産庁「世界の水産資源の動向」

陸の生態系

9つ目は「目標15:陸の豊かさも守ろう」への貢献です。ヴィーガンが増えれば、陸の生態系の保護につながります。

畜産をするために広大な森林伐採をすることで、動物たちの住処が失われます。陸地に住む哺乳類や鳥類の約80%が農畜産業によって住む場所を失っているデータもあります。また、毎年520万ヘクタールの森林が世界から失われており、これは日本の国土の約14%に相当する面積です。

先述したように、ヴィーガンはパームオイルを避ける場合もあります。森林伐採を助長させないことで、森に住む動物たちの住処を確保できます。また、ファッションや化粧品などの分野で使われる毛皮やシルク、革製品や動物性由来の日用品などを避けることも陸の生態系の保護に貢献できそうです。

参照
グリーンピース アマゾン火災と「工業型畜産」
環境省「世界の森林を守るために」

ヴィーガン×SDGs まとめ

SDGsのこと、ヴィーガンという生き方は身近に感じられたでしょうか。

ここであらためて、冒頭でみなさんに問いかけた「ヴィーガンが本当にSDGsに貢献しているのか」について思い出してみてください。SDGsの視点から見ると、ヴィーガンは間接的に良い影響を与えていると言えるのではないでしょうか。しかし、ヴィーガンが増えすぎた場合はどうなりますか?動物性食品の需要が減れば、畜産などに従事する人が仕事を失う可能性があります。

おすすめは、「1日1食から始めるヴィーガン食」です。世界の恵まれない環境で生きる人たちや自然環境に感謝と敬意を払って食について考えてみてはどうでしょうか。

また、ヴィーガンは食だけに留まらないライフスタイルの一つです。ヴィーガンという生き方は、“過剰な”生産・消費・廃棄を繰り返す現代社会へのアンサーなのかもしれませんね。

参照
国際連合広報センター SDGsを広めたい・教えたい方のための「虎の巻」
国際連合広報センター 我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ(外務省仮訳)

Shuhei Miyagawa

フリーランスのライター。ボランティアでキャリア教育と国際協力やってる信州人。農業に関わる人たちの”想い”を届けたい!

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