【これから農業が進む道 Part.1】“あじさい”が咲かせた“農村協働力”の花。

社会×環境×農業

“農村協働力”は読んで字のごとく。

“農村協働力”ってご存知ですか? 農林水産省農村振興局の定義を示しますが、ちょっとカタいので、面倒くさいと思う方は、次の2つのセンテンスは読み飛ばしてもらってケッコウです。
“農村協働力”とは、“農村、あるいは農村と都市の複数の主体が、農村活性化のための目標を共有し、力を合わせて活動したり、自治・合意形成などを図る能力や機能”ということ。
“農村協働力” は“ソーシャル・キャピタル”の農村版だといわれていますが、このコトバもなんだか抽象的。“人々の協調行動が活性化すれば社会の効率性が高まる”という考え方らしいです。

ぶっちゃけ、“みんないっしょになって働いて、より良い農村をつくろうね”ってカンジですかね。

“立梅用水”のことを忘れないでね。

“農村協働力”とは何ぞや?。な~んてややこしいことを論ずるよりも具体的に実例を出した方がハナシが早いので、成功例を紹介したいと思います。舞台は三重県の多気町(たきちょう)勢和(せいわ)地区というところです。
多気町勢和地区に “立梅(たちばい)用水 ” という用水路 があります。つくられたのは はるか昔の江戸時代 。水を引きにくかったこの地域に水をもたらし、以前は芋や雑穀などしか採れなかった農業から水田での稲作に転換させてくれた疎水です
“立梅用水” の水は水田だけでなく、野菜を洗ったりする生活用水や防災にも使われ人々の心も潤してきました。ところが近年、農業の衰退とともに “立梅用水 ” に対する関心が薄れていったのです。

昔の救世主を救った “あじさい ” 。

「200年前の救世主 “立梅用水” を忘れ去っていいのか!」。地域住民は立ち上がりました。1993年に始まったのが、“立梅用水 ” の水沿いを中心にあじさいを植える“あじさい1万本運動”。 この地を“あじさいの里”とすることで、“立梅用水” に注目してもらうと同時に、地域の活性化につなげようという活動です。
運動開始の3年後には、休耕田を活用した苗木づくりなどで6千本の植樹を達成。翌年には“第1回 大師の里・彦左衛門のあじさいまつり”を開催することになりました。ちなみに、“彦左衛門”は“西村彦左衛門”さん。用水の建設に私財をなげうってまで尽力した偉いヒトです。
数々のあじさいボランティア・グループも誕生し、各家庭であじさいを育てて増やす“あじさいの里親運動”といった動きもあって、2001年には目標の1万本を達成。いまや “立梅用水” は、毎年1万人以上の来訪者を楽しませる観光地として、地域の大切な資産になっています

“あじさい”でつながった人々の輪。

な~んだ、“ 農村協働力”ってそれだけのこと? いえいえ、ここでハナシは終わったワケではありません。
あじさい1万本運動”を契機に、地域づくりの活動をするいくつもの組織ができたのです。
“ほてい倶楽部”は、休耕田を活用した農村ビオトープを推し進めるグループ。荒れていた田んぼを復元し、少なくなったメダカを放したり“ホテイアオイ ” という水草を植えたりして、生態系の保全活動を行っています。
集落営農組合は2団体。農地の集積利用や遊休農地対策、環境保全型農業を推し進めています。
薬草学の先駆者である“野呂 元丈”に由来するのが“元丈の館”です。その横には薬草薬樹公園があり、生息している薬草を地域の薬草部会が、ハーブはハーブ部会が、花は花部会が管理。みなさんボランティアでの活動です。
6次産業関連施設は6つあります。そのひとつが“せいわの里 まめや”です。農家レストランであり、豆腐や味噌などの加工所でもあり、直売所も兼ねた複合施設。観光地でもない多気町に“まめや” を目当てにして訪れるお客さんが多いそうです。
“まめや ”とともに人気なのが“元丈の里 ゆめ工房” 。地元で採れた米、野菜、果物や薬草などの加工と販売をしています。農村と都市との交流や子どもたちの体験学習などの場もここ“ゆめ工房”です。
ほかにも、いろいろな活動組織がありますが、これらは行政や学校も含めほとんどがつながっていて、一大ネットワークを築いています。各々の“ 農村協働力組織 ”が自立しながら、連携し合って多気町の活性化を進めているのです。驚くべきことに、その一角には発電所もありました。

用水路でエネルギーの“地産地消”。

「用水路で発電?」。立梅用水では電気をつくっています。しかも、小水力発電が始まったのは100年前、大正10年のことです。現在も電気は中部電力に供給していますが、これとは別に、地元で電気をつくって地元で消費する、エネルギーを“地産地消” しようという動きがありました。 2012年に発足した“立梅用 小型 小水力発電プロジェクト”です。 大規模な土木工事を必要としない小型・高性能・低コストの発電機を開発し、 将来的には地元の電気をまかなおうとしています。いまは、 “元丈の里 ゆめ工房” で使われていますが、ゆくゆくは、ほかの 6次産業関連施設 、獣害対策設備、農業用ポンプ、ハウスの加温設備に供給する予定だそうです。まさに“農村協働力”のエネルギーになるということになりますね。

“農村協働力”十本の矢は折れない。

“あじさい1万本運動”は、“農村協働力” を強くするきっかけになり、地域のコミニティで活発に活動する組織の基盤になりました。その根本あるのが、“人と人とのつながり” です。人々がつながり、お互いが理解し協力しあうことで、地域の課題を解決していく “農村協働力”をパワーアップさせたのではないでしょうか。
多気町勢和地区では10ほどある集落をひとつの集合体としました。 “農村協働力 ” を束ねたのです。そこでどういうことが起こったのか。人と人がつながった時に、情報交換が盛んになり、課題の共有ができます。 仲間同士が励まし合ってお互いが向上して活動が活性化したということもあったはずです。
ポイントは“集落の集合体”。毛利元就が結束の大切さを説いた“三本の矢の教え”という逸話がありますが、勢和地区の矢は三本ならぬ十本です。折れるワケがありません。十本の矢が地域資源である“立梅用水”を中心につながり、“農村協働力”をベースにした共助の心を育んできたのです。

まとめ

“農村協働力”を多気町勢和地区を例にとり説明してきました。この地区で “農村協働力” が向上したきっかけになったのは “立梅用水” 。200年前にこの地区を豊かにしたくれた疎水です。 “立梅用水”の存在価値を高めようと始まったのが“あじさい1万本運動”。この活動が活発になることで、いろいろなところに組織ができ、それぞれがつながっていきました。そして、その輪が連携し、有機的に機能するようになったのです。
ここでのキーワードは“集落の集合体 ” 。“農村協働力”が一体化したことで、一人ひとりの絆が生まれひとつにまとまりました。その“集落の集合体 ”は、さまざまな組織と協働しながら地域全体を活性化させたのです。
“三人寄れば文殊の知恵”。“農村協働力”を高めるポイントは“束ねる”こと。多気町のように“あじさい”が契機になるようなこともあるでしょう。強力なリーダーシップをもつヒトが引っ張るケースも考えられますが、いずれにしても団結するとともに ほかの組織とも結束することが重要なようです。

j.naionji

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