“環境保全型農業”をやったご褒美は”直接支払交付金”。

お金・制度

環境に優しい農業をやることで、国から支援金が支払われます。

前回までは”環境保全型農業”はどんなものか? ということをご紹介しました。確かに、環境が悪化するといちばん困るのは農業や水産業です。率先して保全に動くのはとても素晴らしいことだと思います。政府も危機感を感じているようで、”地球温暖化の防止“と”生物多様性の保全“を目標に強力にバックアップ。”環境保全型農業直接支払交付金“という制度をつくりました。”有機農法”、”堆肥の施用”、”カバークロップ”、”リビングマルチ”など環境保全型の農業を行っている農業団体や農業者に交付金を出すという農林水産省の支援制度です。今回は、この”環境保全型農業直接支払交付金”についてできるだけわかりやすく説明したいと思います。

すみません。最初はおカタい文言から入ります。

「農業の持続的な発展と農業の有する多面的機能の発揮を図るために、農業生産に由来する環境負担を軽減するとともに、地球温暖化防止や生物多様性保全等に効果の高い農業生産活動を支援します」。

これが農林水産省が示す”環境保全型農業直接支払交付金”のポイントだそうです。カンタンにいうと「環境にやさしい取り組みをした農業をやってくれればお金をあげるよ。これって農業の未来につながるよね」ということなんでしょうね。

農業者の組織する団体や一定の条件を満たす農業者が対象です。

対象者は次の通り。誤読があっては困るので、お役所然としているけど農林水産省の文章をそのまま引用しました。
~対象者(申請主体)~
①農業者の組織する団体
複数の農業者、又は複数の農業者及び地域住民等の地域の事情に応じた方々によって構成される任意組織が対象になります。
農業者の組織する団体は、代表者、組織の規定を定めるとともに、組織としての口座を開設してください。
②単独で事業を実施しようとする農業者(個人・法人)は、以下のいずれかの条件に該当するとともに、市町村が特に認める場合に対象になります。
・集落の農地面積の一定割合以上の農地において、対象活動を行う農業者。
・環境保全型農業を志向する他の農業者と連携して、環境保全型農業の拡大を目指す取組を行う農業者。
・複数の農業者で構成される法人(農業協同組合を除く)

~支援の対象となる農業者の要件~
農業者団体の構成員、又は一定の条件を満たす農業者が環境保全型農業直接支払交付金の支援の対象となるには、以下の要件を満たす必要があります。
・主作物について販売することを目的に生産を行っていること。
・国際水準GAPを実施していること。
・環境保全型農業の取組を広げる活動(技術向上や理解促進に係る活動等)に取り組むこと。

“国際水準GAP”は、”より良いやり方で農業をやろう”ということです。

国際⽔準GAP」。聞きなれないコトバが出てきました。
「国際⽔準GAP」とは、なんでしょう。
GAPはGood Agricultural Practiceの略。直訳すると「良い 農業の やり方」ですが、日本語としては「農業生産工程管理」と呼ばれています。国際水準GAPのやり方は2通り。”実施”つまり「GAPに取り組む」と「GAP承認をとる」ことです。農業者が環境保全型農業直接支払交付金の要件には「実施していること」とあるので、”承認”をとる必要はありません。
では、「GAPに取り組む」というのはどういうことなのか? 
次のことをやると「GAPを実施している」と言えるようになります。

1.  国際⽔準GAPに関する指導・研修を受ける。
GAP指導者の指導や地方公共団体や民間団体が主催する研修を受けます。オンライン“これから始めるGAP”でも受講が可能です。指導・研修の内容は、”食品安全”、”環境保全”、”労働安全”、”人権保護”、”農場経営管理”の5項目。申請の時、受講証など、指導・研修を受けたことをが確認できるものの提出が必要です。
   ↓
2. GAPの取組を実施する。
指導または研修で学んだ内容をもとに、実際GAPへの取組を実施します。取組の内容は、自身で決めることが基本。現場の課題を見つけ出し、どうすれば解決できるかの計画を立てる→実行する→確認する→不具合があったら改善する→再度計画する→実行→確認→改善。このサイクルを繰り返し行います。
   ↓

   ↓
3. “GAP理解度・実施内容確認書”を提出する。
課題に対してどんな取組が必要だと考えたのか? 具体的な取組の内容は?という質問に対しての回答を記載した “GAP理解度・実施内容確認書”を提出します。質問の対象は、”食品安全”、”環境保全”、”労働安全”、”人権保護”、”農場経営管理”の5項目。”課題をどう理解したか?”、”どんなことに取り組んだのか?”が問われます。

ここまでで対象者と必要な条件がわかりました。
次は、”どんなケースで支援金が支払われるのか?”です。 

化学肥料や農薬を半分以上減らしていて、”有機農業”などをやっているのが条件。

化学肥料・化学合成農薬を原則5割以上低減する取り組みをしている農業者が基本。
   
地球温暖化防止に効果の高い営農活動をやっている
・有機農業
・堆肥の施用
・カバークロップ など

化学肥料・化学合成農薬を原則5割以上低減する取り組みをしている農業者が基本。
   
生物多様性保全等に効果の高い営農活動をやっている

・有機農業
・冬期湛水管理
・総合的病害虫/雑草管理 など

「化学肥料・化学合成農薬を原則5割以上低減する取り組みをしている」は基本的にやっていなけらばいけないことです。プラスして支援の対象になる項目がいくつか。聞きなれないコトバもあるので、ひとつひとつ説明しますね。

・有機農法
これを知っているヒトは多いはず。化学的に合成された肥料や農薬を使用しない。遺伝子組み換え技術を利用しない農業のことです。ただ、栽培はカンタンではなく、管理もタイヘン。とても労力がかかります。なので、日本の有機農家が占める割合は全農家の0.5%前後。家庭菜園などではよくやられてはいますが、プロにとっては効率が悪く採算がとりにくいのでしょうね。

・堆肥の施用
堆肥には土づくりのための改良効果があるります。土を団粒構造にしたり、通気・透水・保水性をよくする物理性の改良。養分の供給、保肥力の増大といった化学性の改良。微生物の活性化や生物の多様化を促す生物性の改良。この3つの改良です。ワラや動物の排泄物などの有機物が微生物によって分解された堆肥は、手間と時間は掛かりますが、それなりの仕事をしてくれます。

・カバークロップ
おもに育てている作物の休閑期にほかの植物を植えるのが”カバークロップ”です。むかし田んぼにマメ科のレンゲが植えてありましたが、あれが”緑肥”。カバークロップです。開花時前後に土にすきこんで稲の肥料にします。畑にオオムギなど植えてマルチがわりにする”リビングマルチ”も、果樹園にイネ科の1年草を植える”草生栽培”も、雑草を抑制するカバークロップの仲間です。

・冬期湛水管理
米ヌカやボカシ肥など微生物のエサとなるものを撒いておき、冬の時期にも田んぼに水を張っておくのが”冬期湛水管理”です。イトミミズなのが増えて、鳥も飛んできて糞のお土産を置いていきます。土が肥えて柔らかくなり、雑草も抑えられる。肥料の量は少なくなるのに収穫量は増える。水生生物と鳥の生育環境が整うわけなので、生物多様性保全に効果の高い営農活動といえます。

・総合的病害虫 / 雑草管理
化学農薬をいっさい使わないということではありません。できるだけ抑えようという考え方です。まずは、病気に強い品種を導入したり、輪作などで連作障害を防いだりして、病害虫と雑草が生えにくい環境づくり。次が、農地をちゃんと把握して防除の要否とタイミングを計る。必要とあらば、天敵などで生物的に、粘着版などで物理的に除去します。最終手段が農薬による除去です。


さて、肝心な支援金。もらえるのはいかほどか?(平成2年度~)

最後に、申請手続きの流れです。

1. 5年間の事業計画、営農活動計画書を提出し認定を受ける。
農業者団体の構成員が取り組む対象活動の合計面積や推進活動の計画を記載して、市町村から事業計画の認定を受けます。
   ↓
2. 交付申請書の提出、対象・推進活動と国際水準GAPの実施
交付を受ける予定の金額を記載した交付申請書を提出します。そして、対象活動、推進活動をスタート。国際水準GAPも実施も同時です。
   ↓
3. 実施状況報告書などを提出する。
農業者団体の構成員ごとに取り組んだ面積や国際水準GAPの実施内容、農業団体として取り組んだ推進活動を記載して、生産記録などの必要書類をまとめて提出します。
   ↓
4. 実績報告書を提出する。
交付金の使い道などを記載して、市町村が定めた日までに提出します。都道府県や市町村が取組内容を確認後に交付金が支払われる仕組みです。
   ↓
5. 営農活動実績報告書を提出する。
実施状況報告書からの変更内容を記載して提出します。実施状況報告書を出した時点で対象活動などが行われていて、変更がない場合はこのステップは省略が可能です。

まとめ

“環境保全型農業直接支払交付金”は、「環境にやさしい取り組みをした農業をやってくれればお金をあげるよ。これって農業の未来につながるよね」というものです。”有機農法”など環境保全型の農業をやっていれば支給されます。ただ、”化学肥料・化学合成農薬を原則5割以上低減する取り組みをしている農業者”が基本です。

支給される取組をまとめると、
・有機農業
・堆肥の施用
・カバークロップ
・リビングマルチ
・草生栽培
・冬期湛水管理
・総合的病害虫 / 雑草管理 など
加えて、国際水準GAPの認証をとらなくてもいいけれど、GAPに取り組んでいなければなりません。
けっこうハードルが高そうなこの”環境保全型農業直接支払交付金”。対象も農業者団体だったり、同じ志向のヒトとグループを組める農業者だったり。どちらかというと規模が問われているカンジです。でも、小規模な農家でも、寄り合って団体として活動すれば、対象になれるのではないでしょうか。仲間で話し合ってグループとして “環境保全型農業”に取り組むことによって、いろいろな可能性が見えてくるはずです。

j.naionji

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