日本の中心で「お米たべてー!」を叫ぶ ~カートレース参戦でおコメの消費拡大を訴える

Humans of 農業

「服部泰さん」という人

茨城県水戸市に服部泰さんという方がいる。ご自身は農家ではないにもかかわらず、大の農機具マニアの方である。服部さんの管理するホームページでは、珍しいトラクターなどの農機具の記事がたくさん登場し、名著「トラクターの世界史」にも紹介されたほどだ。
そんな服部さんだったが、気になることがあった。自宅周辺に青々と広がる田んぼのことだ。実は近所の田んぼは、飼料米が7割以上になっているという。人間が食べるお米より、牛が食べるお米の方が多くなってしまっていたのだ。
それを聞いた服部さんは、「この調子だと、将来お米が見直されて『やっぱりお米だよな』ってなっても、簡単には食べられなくなるかもしれない。ニンゲンの都合で急にウシさんのゴハンを取りあげるわけにはいかない」と、危機感を持つようになった。

レースへの挑戦

そんな服部さんがお米の消費拡大を訴える場に選んだのが、飲料メーカーのレッドブルの主催する「RED BULL BOX CART RACE」だった。このレースは手作りのボックスカートで坂道を走らせ、カートのデザイン・ダンスなどのパフォーマンス・タイムの3つの基準で順位を競うもので、日本では3回目の開催だ。

服部さんはチーム名を「お米たべてー!TEAM」と名付け、「もっとお米を食べてほしい」という思いを伝えるために、「米袋」をモチーフにしたカートを製作した。
ベースこそ鉄製だが、軽量化のために本体フレームはベニヤ板の木製で、米袋の「はちきれ感」を出すためにお米状の緩衝材(よく荷物の間に挟まているアレ)を詰めて、クラフト紙で包んだ。
予算が限られているため、一輪車のタイヤやバイクのホイールなどを再利用してコストを抑える工夫も怠らなった。それは服部さんにとって、まるでメーカーの技術者になったようなチャレンジングな体験だった。

2017年秋に友人ら3名と出場したレースは、台風直撃の大雨の中で行われた。そんな悪天候の中、「お米たべてー!TEAM」は見事に3位に入賞!これは人数の多い大学生チームや、予算の豊かなメーカー含む企業チームなど65チームが参戦する中で、小さな農機具店がスポンサーにつくとはいえ、少人数のボランティアグループのチームにとっては、素晴らしい快挙だった。東京都赤坂サカスで行われたこのレースは、まさに日本の中心で「お米たべてー!」を叫んだ瞬間だった。

この大会は東京都で行われたこともあって、観客には「米袋」を知らない人が少なからずいたことが後から分かった。
そこで2年後の2019年秋のレースには分かりやすい「おにぎり」の形のカートを作り、おコメの消費拡大を訴えるべく、「お米たべてー!TEAM」は再び参戦した。
東京よみうりランドで行われたこのレースでは、総合では入賞3位以内を逃したものの、タイムでは最速の1位となり、「キングスピード賞」を受賞した。そのとき、「世界最速のおにぎり」が誕生した。
空気抵抗の悪いおにぎり形のカートで「ころりん」と転びもせず、最高のタイムをたたき出したことは、服部さんの執念が生んだ奇跡だった。

農林水産省も「ご飯もう一口で食糧自給率が1%アップ」とアピールしている。あなたが毎日のご飯をもう一口よけいに食べることが、日本の稲作を救うことにつながるのかもしれない。
次回の「RED BULL BOX CART RACE」の予定はまだ決まっていないが、「お米たべてー!TEAM」の今後の活躍が大いに期待される。

こちらの米袋は掌サイズで中にはおにぎり一個分のお米が入っているそう。
レース当日は会場に集まった方々にこの米袋を配るというパフォーマンスも。

伊藤 慎一郎

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フリーライター兼、伊藤産業機械(株)専務の伊藤です。 農機具販売店に勤務のかたわら、記事を書かせていただくことになりました。

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