耕作放棄地の増加が生態系サービスの質を低下させるのはなぜか?

社会×環境×農業

耕作放棄地とは「今は利用されていないが、過去に作物を育てる土地として利用されていたと土地」のことを指します。そして現代の日本では若者の農業離れ、農業者の高齢化に後継者不足などでこの耕作放棄地が増え続けています。

もちろん耕作放棄地の増加で国内の食糧自給力が低下することは当然として、農業を持続しないことで多くの生物の絶滅に繋がり生物多様性の質が低下、それによってもたらされる自然環境の恩恵、すなわち生態系サービスの質が低下することが懸念されています。

実はこのことは我々の生活の中でも大きな影響を与えています。そこで今回の記事では、生態系サービスとはどのようなもので、どんな恩恵を得ているのか?なぜ耕作放棄地が増えるとその生態系サービスの質が下がるのか?といったことを解説していきます。

生態系サービスとは?

学術的用語で聞きなれない生態系サービスという言葉ですが、意味としては「自然環境における生態系機能が、人間社会にもたらす恩恵」のことを指します。これらのサービスがもしなくなってしまい、人類の技術のみで再現しようとすれば数十兆円規模の資金が必要になるといわれ、そのことからも日常の生活に不可欠な要素だと言えます。

生態系サービスは大まかに分類すると4種類に分かれます。

供給サービス

食料、衣類の繊維、薬品の材料といった資源。これらを社会全体は生態系の恩恵で得ているといえます。特に薬品に関していえば動植物のDNAから特定の病気においての特効薬の開発に発展することも。

調節サービス

大気の浄化や土壌を維持することで自然災害を未然に防ぎます。一番わかりやすい例としては多様な植物がいることで土壌の浄化や水質の浄化を行うこといで水資源の供給を促すことが挙げられます。

文化的サービス

バードウォッチングやハイキングといった自然がもたらす娯楽、時には情操教育といった恩恵の全般のことを言います。他にも林間学校で行われる自然の良さを教育する、といったこともこのサ-ビスに含まれます。

基盤サービス

供給・調節・文化的サービス全ての基盤になる、生態系における生物や自然環境の営み全般のことを指します。具体例として、植物のよる栄養素の取り込みによる大地の肥沃化や、地中の水分を大気に放つことによる気候の調節など。

これらの生態系サービスによって人類の営みは維持・繁栄されています。そしてその生態系サービスを支えるのが、生物の多様性でありその多様性を低下させている要因として、耕作放棄地の増加があるのです。

耕作放棄地の増加は、なぜ生態系サービスの質を下げるのか?

人の生活には菌類にしても植物、昆虫、動物にしても様々な生物が多様に生息することによる恩恵を得て生活を維持してきました。しかし特定動物への過剰な狩猟や人の自然開発によって、生物の数自体が減少、種によっては絶滅もしています。

そして水田や畑、あるいは牧草地として使っていた土地を放棄することは前述したことに比べればそこまで、生物界への影響も少なそうで、生物の減少や絶滅へつながるイメージはあまりないと感じる人もいます。そもそも人が利用していた土地が自然に帰りそうで、むしろ良いことなのでは、と一瞬思いますが、そうではありません。

例として水田がもたらす生物多様性の話を挙げてみましょう。水田ならばトンボやアメンボなどが生息し栄えます。さらにはそういった昆虫を目的として鳥類が餌場として水田を利用し生活するようになります。加えて農家さんが水田周りの草丈の長い草を刈ることで、草丈の短い植物も生き残れるようになっていき、総じて生物の多様性がより豊かになります。

しかしその水田を放棄してしまえば昆虫は繁殖できず、鳥類は餌場を失い、丈の長い草を刈り続けられることで生き残っていた植物は生き残れなくなり、結果的にかつて水田だった土地は特定の生き物しか生き残れない土地へと様変わりします。

例え話ではありますが実際にこのような理由で大きく数を減らした、時には絶滅してしまった動物さえいます。総じて水田や畑というのは生物生息や繁栄に大きく影響があり、またに人もそこから前述のようなサービスを受けていましたが、昨今の耕作放棄地の増加による生態系のバランス崩壊から様々な悪影響が出てきています。

一番わかりやすい内容として鳥獣被害の増大していることが挙げられるでしょう。耕作放棄地の増加によって野生動物にとって活動しやすい場所が増え、畑などにアクセスしやすい状況下が生まれます。

まとめ

生態系サービス=生態系が社会全体にもたらす恩恵のこと。

食料などの資源を与える供給サービス、植物による水質浄化といった調節サービス、自然由来の娯楽や教育といった文化的サービス、そしてそれらの元となる生態系を維持する基盤サービス、の4種類に分類される。

これらのサービスは生物多様性によって維持されているが、耕作放棄地の増加で徐々にその恩恵の質が低下している。

「農」を持続させ発展させる意味とは食料の生産だけでなく、自然環境の維持やそれ以外の恩恵を供給する意味もあるのです。

そして耕作放棄地とはある一種「国土の放棄」ともいえる事柄です。より良い「農」を発展させ、国土を有効活用し、生態系サービスの恩恵を受けるためにも、耕作放棄地の課題解決は考え続けなくてはならないのかなと思います。

Yuta Kobayashi

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山口県在住のフリーランスライター 兼 サラリーマン。 農学部卒業後に酒蔵に就職、後に退職し6次産業系の企業に就職。数年後ライター活動を始める。 専門分野は実...

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